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なんでこんな時にこんな事になるんやろな・・・坪井咲夜は一人で西日の差し込む廊下を歩く。先日入院した自分の母。幼い頃に自分を置いて仕事で世界を飛び回っていた母。それが自分が入職した時に自宅に帰ってきていたのは知っていた。ただ会いたくなかった。
あー!咲夜ー!ちょうどよかったっすー!
いつものような賑やかな声がする。信頼する友人の温かい声。だけども今は一人になりたかった。白波百合の声を坪井は背中のままに聞く。
ほらー!今日は一緒に勉強しよー!最近ご無沙汰だったし!
そうですわ!ローマは1日にしては成らずですわ!勉学もまた同じですの!
なんやそれ・・・全然わからへんわ・・・
いいからいいから!一緒に勉強するっすよー!
白波百合に肩を組まれて、上代葉月と桜井玲奈に連れられるまま廊下を歩く。多分この友人達は自分の今の気持ちを、多分過分に考えているんやろな・・と思う。そして連れられてきた更衣室で四人で座る。
そんで・・まぁ別にええけどな、今日は何を勉強するねんな。
今日は気管支肺炎だね!季節の変わり目だからそういう人も増えてきているでしょう?
ふむ・・・ならそもそも肺炎とは外気と通じる気管から気管支の末端、そしてその先の空気を貯めて、血中と酸素や二酸化炭素のやり取りをする肺胞に細菌やウイルスなどの病原体が感染した炎症を起こしたものを言うのだ。
なんですのそれは?薫様の真似なら似ても似つきませんわ!あっ山吹さんはもっとこう・・・・
そのやり取りを見て、坪井ははぁと息を漏らす。なんや自分一人だけで抱え込んでいたのがアホみたいや。そう思う
まぁええわ!それなら所謂風邪症候群、感冒とも言ったりするな。それは上気道に感染して炎症を起こすからそこからずっと先に入り込んで炎症を起こすということやな。
そうそう風邪薬のCMでおなじみだね!くしゃみや鼻水、咳や痰、時には咽頭痛があって、人にはよるけど37度ちょっとの熱が出たりするんだよね。
そうですわ!これらは80-90%がウイルスが原因とされていて、鼻から喉にかかる部分の上気道に炎症が起きるのですの。
これは以外と原因が明確という訳じゃないっすから、なんともっすけどウチらでも容易に起きることでもあるっすね!
白波はいつも以上に元気に見える。いや元気を装っているとも思う。こういう所が何とも不器用で・・・今はとても有り難い。
それを踏まえた上での肺炎やねんけど、これは所謂かぜ症候群とは違って、咳や痰の症状が強く出る気管支肺炎と、突然の高熱や胸痛で発症する大葉性肺炎に分けられるねんな!
そうっすね。気管支肺炎はその名の通りに気管支に感染や炎症所見が見られるっすから咳や痰の症状が最初から強く見られるっす!
そして大葉性肺炎は、肺には肺葉と呼ばれるお部屋がありますから、そこに大きく広がる感染でもありますの。そしてこれは前駆症状として咳や痰はありませんから、38度を超える急な発熱を来たしますわ。そしてそれ自体が体にとっては、特に高齢な方には大きくダメージになりますの。それによっていつも出来ている事が出来なくなったり、歩くのも難しくなる事がありますの。
そうだね。それだけ全身に倦怠感が出たり、そもそも高熱だと動きたくならないもんね・・・あっ!これはそれぞれ起こしやすい病原体があって、気管支肺炎では肺炎マイコプラズマが有名で、他にも様々なウイルスが原因かな?そして大葉性肺炎はみんな知ってる肺炎球菌だったりするの!
しっかり玲奈は兎も角、白波や上代まで詳しすぎんな・・・と坪井は笑みを漏らす。そもそも普通に元気付けたらええやんと思い、首を一度降る。
そんで肺炎の症状やな。38度以上を超える発熱が数日感続いて、悪寒や倦怠感が続くねん。そして肺炎の重症度に伴って呼吸困難感や息切れが出て日常生活も難しくなる事があるねんな。
それに痰の色も普段と違う事があるっす。黄色や緑色、鉄錆色って感じっすかね?痰の正常も要チェックっす!
それに特に高齢の方では意外と発熱が目立たない事もあるの。自分でそれを訴える事が出来ない人もいるからね。それでも食欲が低下したり、いつもよりジッとしていたり、ぼーっとしていたりと何だかいつもより元気がない事があるね。だから早めに気がつかないと凄く悪化して搬送されたりするの。
そうですはね。体の機能が落ちきってからリハビリするのは凄く時間がかかりますし、時間も掛かりますわ!なので早期発見が大切な事ですわ!
そやなと坪井は答える。他人の辛い事ならどんな事でも聞けるけど、こうなってしまった時、自分がどうしようもない時にどう言葉にしていいかはわからないと思う。
そして一番怖いのは二次感染やな。最初は上気道の感染症、所謂風でも長引く事で気管支炎、気管支肺炎へと進展する事もあるねん。やから本当に要注意や!
そうそう。だから初期症状の把握が必要だね。
それにそうなってしまった時にすぐ動く事。
何事も早期発見と早期治療!そして何よりも誰かを頼る事ですわ!
そやな。と坪井は返事をする。多分自分がこういう事を相談できない性格だと知っていてこうやって質問しているんだろうけど・・それでもまぁ分かりやすいし、不器用やねんなぁ。そう言って坪井は笑みを浮かべた。
坪井咲夜の手帳 1
・風邪と肺炎は違う。高熱や倦怠感が続く時には要注意!
・症状が続く事による二次感染はもともとの症状も増悪させる。何事も早期発見と治療。
・そやな。そして何より誰かを頼る事も必要やな。
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